実務ガイド / 2026.07.19
電子帳簿保存法
設計事務所ガイド
2024年1月から、メールやクラウドで受け取った書類のデータ保存が義務になりました。設計事務所が対応すべき「電子取引データ保存」の要件と、設計事務所特有の書類への適用を整理します。
01 電子帳簿保存法の3つの区分
電子帳簿保存法(電帳法)は、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの区分から成ります。設計事務所が最優先で対応すべきは3つ目です。
電子帳簿等保存(任意)
会計ソフトや表計算ソフトで自ら作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する制度。導入は任意。
スキャナ保存(任意)
紙で受け取った領収書・契約書などをスキャンしてデータ化して保存する制度。導入は任意。200dpi以上の解像度など一定の要件あり。
電子取引データ保存(義務)
メール添付・クラウドサービス等、電子的に受け取った書類をデータのまま保存することが2024年1月から義務。紙に印刷して保存することは認められない。
02 設計事務所がまず対応すべきこと
義務である電子取引データ保存の要件は「取引年月日・取引金額・取引先名が検索できること」です。大規模なシステムは不要で、ファイル命名規則とクラウドストレージの組み合わせで対応できます。
具体的な保存方法の例として、ファイル名に日付・金額・取引先を含める方法があります。
ファイル命名規則の例
20261015_山田構造設計_請求書_110000円.pdf
20261101_田中建設_発注書_550000円.pdf
20261120_株式会社ABC_領収書_32000円.pdf
※ Google Drive・Box・Dropbox等のクラウドストレージでファイル名検索ができれば、タイムスタンプは必須ではありません。保存期間は原則7年間(欠損申告等は10年)。
03 設計事務所特有の書類への適用
設計事務所では、通常の事業者とは異なる種類の書類が電子で流通します。主なものと対応の要否を整理します。
外注設計者(構造・設備)からのメール請求書PDF
電子取引データ保存の対象。受信したまま指定フォルダに保存し、ファイル名に日付・金額・取引先を含める。
施主からメール・LINEで届いた変更指示書・発注確認
電子取引データ保存の対象。業務上の書類(発注・変更指示)は税務書類に準じて保存することを推奨。
施主から受け取った紙の設計契約書
紙書類のため電子取引には該当しない。スキャナ保存は任意。紙のまま保存しても問題なし。
現場で撮影した工事監理写真
電帳法の対象外。建築士法に基づく工事監理記録として別途保存が必要(5年間)。AIで報告書化するツールも有効。
クラウド発行された電子請求書(クレジットカード明細等)
電子取引データ保存の対象。ダウンロードしてクラウドストレージへ保存する。
04 一人事務所に合った実務的な保存体制
専用システムを導入しなくても、クラウドストレージ+命名規則で電帳法の要件を満たすことが可能です。一人の設計事務所が無理なく続けられる体制として、次のような構成が考えられます。
- 01
受信メールの添付書類は即日ダウンロード — 後回しにすると漏れが生じる。受信した当日に保存フォルダへ移動する習慣をつける
- 02
フォルダ構成は年度ごと → 取引先ごと(または書類種別ごと)— 例: 2026年度 / 外注費 / 山田構造設計 /
- 03
ファイル名に日付・取引先・金額を含める — これで「検索要件」を満たせる(専用ソフト不要)
- 04
会計ソフト(弥生・freee・Money Forward等)の証憑管理機能を使う — 仕訳と紐付けてデータを管理できる
05 インボイス制度との関係
インボイス制度(適格請求書等保存方式)と電子帳簿保存法は、別の法律ですが連動して理解する必要があります。
インボイス制度のもとで受け取る適格請求書(PDF等のデータ形式)は、電子帳簿保存法の「電子取引データ保存」の対象になります。つまり、インボイス対応の書類もデータのまま保存しなければなりません。設計事務所側が適格請求書を発行する際の注意点については、設計事務所のインボイス制度対応ガイドをあわせてご覧ください。
よくある質問
Q一人の設計事務所にも電子帳簿保存法は適用されますか?
はい。個人事業主の設計事務所にも適用されます。特に2024年1月から義務化された「電子取引データ保存」は、事業規模を問わず、メールやクラウドサービス経由で受け取った書類すべてが対象です。会計ソフトで作成した帳簿の電子保存(電子帳簿等保存)や、紙書類のスキャナ保存は任意ですが、電子取引データ保存だけは義務のため最優先で対応してください。
Q施主やメーカーからメール・LINEで届いた変更指示書・発注書はどう保存すればよいですか?
メール・LINEで受け取ったPDF添付書類やデータは「電子取引」に該当し、データのまま保存する義務があります。保存要件は「取引年月日・取引金額・取引先名が検索できること」です。実務的には、ファイル名に日付・金額・取引先を含めてクラウドストレージに保存する方法が手軽です(例:20261015_田中建設_発注書_550000円.pdf)。プリントアウトして紙で保存する方法は2024年1月以降は認められていません。
Qスキャナ保存と電子取引データ保存の違いは何ですか?
スキャナ保存は、紙で受け取った書類(施主からの書面契約書など)をスキャンしてデータ化して保存する制度で、導入は任意です。一定の解像度要件(200dpi以上)やタイムスタンプ要件があります。一方、電子取引データ保存は、最初からデータ(メール添付PDF・電子請求書など)で受け取った書類をそのままデータで保存する制度で、2024年1月から義務化されています。設計事務所がまず対応すべきはこちらです。
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