実務ガイド / 2026.07.16
建築士事務所の業務管理 — 一人事務所が法令でやるべきこと一覧
建築士事務所の「業務管理」は、設計や監理そのものに加えて、建築士法・税法が求める記録と報告の義務を含みます。一人で事務所を回していると後回しになりがちな義務を、根拠条文つきの一覧に整理しました。
建築士法上の義務一覧
事務所登録(5年ごとの更新)を前提に、開設者・管理建築士として継続的に発生する義務は次のとおりです。
根拠条文 | 義務 | 内容 |
|---|---|---|
建築士法 24条 | 管理建築士の設置 | 事務所ごとに専任の管理建築士を置く。一人事務所では開設者本人が管理建築士を兼ねるのが通常で、管理建築士講習の修了が要件。 |
建築士法 24条の4 | 帳簿の備付けと15年保存 | 契約年月日・委託者・業務の種類などを記載した帳簿を備え、各事業年度末で閉鎖した日の翌日から15年間保存する。 |
建築士法 24条の4 第2項 | 図書の15年保存 | 配置図・各階平面図・立面図・断面図・構造計算書等の設計図書と工事監理報告書を、作成した日から15年間保存する。 |
建築士法 23条の6 | 年次報告(設計等の業務に関する報告書) | 毎事業年度の経過後3ヶ月以内に、業務実績・所属建築士・管理建築士の意見等をまとめて都道府県知事に提出する。実績ゼロの年度でも提出は必要。 |
建築士法 20条 3項 | 工事監理報告 | 工事監理を終えたとき、その結果を文書(工事監理報告書)で建築主に報告する。 |
建築士法 22条の2 | 定期講習の受講 | 建築士事務所に所属する建築士は、3年ごとに登録講習機関の定期講習を受講する。 |
※ 法令は改正されます。手続きの詳細・様式は登録先の都道府県(建築士事務所協会)と国土交通省の最新情報を確認してください。
税務・経理まわりの義務
建築士法とは別に、事業者としてインボイス制度と電子帳簿保存法への対応が求められます。
義務 | 内容 |
|---|---|
適格請求書(インボイス)の発行・保存 | 課税事業者として登録している場合、登録番号・税率ごとの消費税額等の要件を満たした請求書を発行し、控えを保存する。設計料と工事監理料で税率が変わることはないが、記載要件の漏れは取引先の仕入税額控除に影響する。 |
電子帳簿保存法への対応 | メールやチャットで受け取った請求書・見積書などの電子取引データは、紙に出力しての保存が認められず、改ざん防止措置と検索要件を満たした電子保存が義務。LINEやメールに散らばったやり取りをどう残すかが実務上の課題になる。 |
確定申告・記帳 | 個人事業主なら青色申告の複式簿記、法人なら決算。設計料の入金・外注費・経費の記帳を日常的に回す仕組みが要る。 |
一人事務所での現実的な回し方
記録は発生した瞬間に残す
帳簿・監理記録・年次報告の材料は、あとからまとめて作ると抜ける。現場写真や施主とのやり取りが発生した時点で、日時つきの記録として自動的に残る仕組みにする。
施主とのやり取りを一元化する
LINE・メール・電話・紙に散らばった連絡は、電子帳簿保存法の保存要件を満たせないだけでなく、言った言わないの争いの種になる。窓口を一つに決めて案件ごとに整理する。
請求と入金の待ち時間を減らす
請求書の作成・送付・入金確認・記帳は、一人事務所では純粋な無給時間。適格請求書の要件を自動で満たし、施主が支払いやすい手段を用意して回収を早める。
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2つ目の「施主とのやり取りの一元化」は、施主とのやり取りをLINEで管理する方法で個人LINE・LINE公式アカウント・LINE WORKSの違いから詳しく解説しています。
よくある質問
業務実績がない年度でも年次報告は必要ですか?
必要です。建築士法23条の6の「設計等の業務に関する報告書」は、事業年度中の業務実績がゼロでも毎事業年度経過後3ヶ月以内に提出が求められます。
帳簿や設計図書はいつまで保存する必要がありますか?
帳簿は各事業年度末で閉鎖した日の翌日から15年間、設計図書・工事監理報告書は作成した日から15年間の保存が義務付けられています。
一人の設計事務所でも管理建築士は必要ですか?
必要です。建築士事務所には専任の管理建築士の設置が義務付けられており、一人事務所では開設者本人が管理建築士講習を修了して兼ねるのが一般的です。
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