実務ガイド / 2026.07.22
設計料の見積書の書き方
「見積書 書き方」で検索すると出てくるのは、工事原価を積算する建設業向けの様式ばかりです。しかし建築士・設計事務所が施主に示すのは工事費ではなく、設計・工事監理の業務報酬(設計料)。数量×単価の積み上げではなく、業務範囲・報酬区分・着手金/中間金/竣工金の分割スケジュールを軸に組み立てます。本ガイドでは、設計料の見積書に必要な記載項目とテンプレートの構成を、一人の建築士事務所向けに書き方の順でまとめました。
01 工事見積書の書き方が設計料に合わない理由
一般的な見積書テンプレートや「見積書の書き方」の解説は、工事原価の積算(材料費・労務費・数量拾い)を前提にしています。設計事務所が請求するのは工事費ではなく業務報酬であり、見積書の組み立て方の重心が次の3点で異なります。
「数量×単価」ではなく「業務区分×報酬」
工事見積は品目ごとの数量と単価を積み上げるが、設計料は基本設計・実施設計・確認申請業務・工事監理といった業務区分ごとの報酬で示す。行の立て方そのものが違うため、工事用の様式を使うと不自然になる。
金額の下に「支払いスケジュール」が必要
設計料は工程の節目ごとに着手金・中間金・竣工金と分割請求するのが一般的。合計金額だけでなく、各回の金額と請求時期を示す欄を見積書に組み込む必要がある。
読み手が個人施主のことが多い
企業間取引を想定した専門的な工事見積と違い、住宅設計では読み手が個人。専門用語を減らし、何にいくらかかるのかが一目でわかる書き方が求められる。
02 設計料見積書の基本構成
設計料の見積書は、上から下へ次の順に並べると読み手が理解しやすく、テンプレート化もしやすくなります。自分の様式を作るときの土台としてお使いください。
表題・宛名・発行者情報
「御見積書」の表題、施主名(○○様)、発行日・見積番号・有効期限、事務所名と建築士登録番号・適格請求書発行事業者の登録番号。冒頭でどの案件の見積かを明確にする。
件名・建物概要
「○○邸 新築工事 設計・工事監理業務」など件名と、所在地・用途・構造・延床面積といった建物概要。業務報酬の根拠となる規模を先に示す。
業務報酬の内訳
基本設計・実施設計・確認申請業務・工事監理などの業務区分ごとに報酬額を並べる。小計・消費税・合計を明記する。
お支払いスケジュール
着手金・中間金・竣工金など各回の名称・金額・請求時期の一覧。分割請求の根拠になる最重要欄。
別途費用・実費立替
確認申請手数料・各種申請料・印紙代・交通費など、報酬に含まない実費を区分して概算で示す。
業務範囲・条件・備考
含む業務/含まない業務、成果物、前提条件、見積有効期限、キャンセル時の扱いなどの注記。
03 記載項目ごとの書き方のポイント
構成が決まったら、各項目を後の契約・分割請求・確定申告の根拠に耐える形で書きます。特にトラブルになりやすい4項目の書き方を押さえておきましょう。
業務範囲は「含む/含まない」で書く
基本設計・実施設計・確認申請業務・工事監理の範囲を列挙し、別途となる業務(測量・地盤調査・構造計算の外注・各種申請の代行など)も明記する。曖昧にすると追加業務の請求時に「聞いていない」となりやすい。
報酬区分は業務の節目に対応させる
報酬を業務区分ごとに分けておくと、分割請求(着手金・中間金・竣工金)の各回と自然に対応する。区分の金額配分は業務の重さに合わせ、根拠を説明できる形にしておく。
分割請求は金額と時期をセットで書く
「着手金:契約時/中間金:実施設計完了時/竣工金:引き渡し時」のように、各回の金額・消費税・請求時期を一覧化する。見積のこの欄がそのまま請求書に引き継がれる形にすると、請求のたびに作り直さずに済む。
消費税・インボイス要件を満たす
設計料は原則10%課税。適格請求書発行事業者なら登録番号・税率ごとの対価の額・消費税額を正しく計算・表示する。実費立替を含む場合は課税対象かどうかを区分して扱う。
適格請求書の必須記載項目と分割請求(着手金・中間金・竣工金)の実務上の注意点は設計事務所のインボイス制度対応ガイドで、実費立替と報酬の会計上の区分は建築士・個人事業主の会計ソフト選びガイドで詳しく解説しています。
04 見積書を書いたあと:承認・請求・入金へつなぐ
見積書は作って送るだけでは完結しません。施主の承認を得て、承認済みの内容を請求書へ引き継ぎ、入金まで管理する流れを見据えて書式を整えておくと、あとの工数が大きく変わります。
承認の記録を残す形で送る
PDFの郵送・メールでもよいが、施主がその場で内容を確認・承認でき、承認日時が残る形にしておくと、着手のタイミングが明確になり齟齬を防げる。
承認済み見積書を請求書に引き継ぐ
承認された各回の金額・税率・業務区分をそのまま請求書に転用できれば、分割請求のたびに作り直さず、転記ミスも起きない。
施主が選べる入金手段を用意する
銀行振込に加えてクレジットカード・PayPayなどを用意すると、個人施主が支払いやすく入金サイクルも短縮できる。
見積書から請求・入金までをつなぐアプリ・ソフトの選び方は建築士の請求書作成アプリ・設計事務所の見積書ソフトの選び方を、設計料をクレジットカード・PayPayで受け取る仕組みは設計料をクレジットカード・PayPayで受け取る方法をあわせてご覧ください。
よくある質問
Q工事見積書のテンプレートを設計料の見積書に流用できますか?
そのままの流用はおすすめしません。ネット上で見つかる見積書テンプレートの多くは、材料費・労務費・数量拾いといった工事原価の積算を前提にした様式です。設計事務所が示すのは工事費ではなく「設計・工事監理の業務報酬」で、必要な行は数量×単価ではなく、基本設計・実施設計・確認申請業務・工事監理といった業務区分ごとの報酬です。工事見積の様式を使うと、施主に「工事も含む金額」と誤解されたり、業務範囲が曖昧になりトラブルの原因になります。設計料用に、業務範囲と支払いスケジュールを軸にした様式を用意しましょう。
Q設計料の見積書に着手金・中間金・竣工金の分割はどう書けばよいですか?
見積書の合計金額の下に「お支払いスケジュール」の欄を設け、各回の名称(着手金・中間金・竣工金など)・金額・請求時期(契約時/実施設計完了時/引き渡し時など)を一覧で示すのが基本です。割合(例:3:4:3)で決める場合も、金額と時期を具体的に書いておくと施主が資金計画を立てやすくなります。分割請求は後の請求書・入金管理にそのまま引き継がれるため、見積段階で各回の金額と消費税を確定させておくと、請求のたびに作り直す手間と転記ミスを防げます。
Q確認申請手数料や印紙代などの実費は見積書にどう記載しますか?
設計報酬とは別の欄に「実費・立替金」として区分して記載します。確認申請手数料・各種申請料・印紙代・遠方の交通費などは、設計事務所の報酬ではなく施主が負担する実費(立替)にあたることが多く、報酬と混ぜると金額の見え方も会計処理も不正確になります。見積書では「別途実費」として概算を示し、確定額は実費精算とする旨を注記しておくと親切です。立替金と報酬の会計上の区分については会計ソフトの選び方ガイドもあわせてご覧ください。
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