実務ガイド / 2026.07.21
設計料をクレジットカード・PayPayで受け取る方法
銀行振込では発注から入金まで30〜60日かかるケースも珍しくありません。施主がクレジットカードやQRコード決済(PayPay等)で設計料を支払える環境を整えることで、入金サイクルを短縮し、施主側の支払い負担も軽減できます。本ガイドでは、決済手段の導入手順・手数料の目安・インボイス制度への対応・会計処理の方法を一人の建築士事務所向けに解説します。
01 銀行振込が生むキャッシュフロー課題
設計事務所の売上は着手金・中間金・竣工金と分割請求が一般的ですが、いずれも銀行振込の場合、請求書発行から施主が振込む間に時間的なズレが発生します。特に個人の施主は請求書の締日を意識せず、督促の連絡が必要になることもあります。
入金サイクルの長期化
請求書を郵送・メール送付してから実際の着金まで、個人施主の場合は2〜4週間かかるケースが多い。工事監理期間中は複数の入金タイミングが重なり、入金管理に手間がかかる。
施主の振込忘れと催促コスト
振込期日を過ぎても入金されず、個別に連絡が必要になることがある。催促のやりとりはトラブルの芽になりやすく、施主との関係に余計な摩擦を生む。
領収書・入金確認の管理コスト
複数案件を並行すると、どの請求書の入金がされていないか把握するだけで一定の管理工数がかかる。
02 クレジットカード・PayPayで設計料を受け取る仕組み
決済サービスに登録すると「決済リンク(Payment Link)」を発行できます。請求書に決済リンクのURLを記載しておくと、施主がスマートフォンから好きな支払い手段で決済できます。レジや端末は不要で、一人事務所でも低コストで導入できるのが特徴です。
クレジットカード決済
Square・Stripe・PayPay for Businessなどが対応。手数料の目安は売上の3.25〜3.6%(サービスにより異なる)。入金は通常15〜45日後(月2回振込が多い)。施主は一括払いのほかリボ・分割払いも選択可能。
PayPay(QRコード決済)
PayPay for Businessは手数料1.6〜1.98%(2024年時点)でクレジットカードより低め。入金は原則翌営業日〜3営業日と早い。施主がPayPayを利用している場合、支払いの手間が最小化される。
銀行振込との併用
カード・QR決済はあくまで選択肢の追加。従来の銀行振込も残したまま、施主が都合の良い手段を選べるようにしておくのが一般的な運用。請求書の「支払い方法」欄に振込口座と決済リンクの両方を記載する。
03 請求書への記載とインボイス制度への対応
適格請求書発行事業者として登録している場合、決済リンクを案内する請求書にも適格請求書の要件を満たした記載が必要です。記載内容は従来の銀行振込向け請求書と同じで、支払い手段の追加による記載変更はありません。
適格請求書の必須記載(変更なし)
①発行者の名称と適格請求書発行事業者登録番号 ②取引年月日 ③取引内容(設計料・工事監理料等) ④税率ごとの税抜・税込金額 ⑤消費税額 ⑥受取人の名称。決済手段としてカードやPayPayを追加しても、これらの記載要件は変わらない。
消費税の計算基準
消費税は「施主が支払う設計料の総額」を基準に計算します。決済手数料(カード会社に支払う3%等)は建築士側の支払手数料であり、施主への請求書に記載する消費税額には影響しません。
決済リンクの記載場所
請求書下部の「支払い方法」セクションに、振込口座と並べて「カード・PayPay決済はこちら: [決済リンクURL]」と記載するのが一般的。PDFで送付する場合はURLをクリッカブルにしておくと施主が手間なく支払いできる。
適格請求書の記載項目・設計料の分割請求における注意点は設計事務所のインボイス制度対応ガイドで詳しく解説しています。
04 決済手数料の会計処理
カード・QR決済を導入すると、売上から決済手数料が差し引かれた金額が口座に入金されます。会計処理では「売上を総額計上し、手数料を別途経費計上する」方法が一般的です。
売上の計上(総額計上の原則)
施主が支払った設計料の全額を売上として計上します。例: 設計料110,000円(税込)をカード決済で受け取り、手数料3,575円が差し引かれた106,425円が入金された場合、売上は110,000円で計上し、手数料3,575円は「支払手数料」として別途経費計上します。
仕訳の例(freee / マネーフォワード / 弥生 共通)
① 請求時: 売掛金 110,000 / 売上 100,000・仮受消費税 10,000 ② 入金時: 普通預金 106,425・支払手数料 3,250・仮払消費税(手数料分)325 / 売掛金 110,000。決済サービスから発行される明細書を証憑として保存します。
決済手数料の消費税(課税仕入れ)
決済サービスへの手数料は原則として課税仕入れとなり、消費税の仕入税額控除の対象です(適格請求書発行事業者登録済みのカード会社・決済サービスからの請求に限る)。免税事業者の場合は消費税の控除は不要で、手数料を全額経費計上します。
会計ソフトの選び方と設計業特有の経理処理(外注費の源泉徴収・着手金の売上計上)については建築士・個人事業主の会計ソフト選びガイドをあわせてご覧ください。
よくある質問
Q設計料をクレジットカードやPayPayで受け取るには、何が必要ですか?
決済リンクを発行できる決済サービス(SquareやStripe、PayPay for Business等)への加入が必要です。審査通過後、支払いリンクを生成して請求書に記載するだけで施主がスマートフォンから決済できます。銀行口座の登録と本人確認書類の提出が一般的に必要で、審査には数日〜1週間程度かかります。事前にどの決済手段を受け付けるかを請求書の「支払い方法」欄に明記しておきましょう。
Qカード決済の手数料(3%前後)は経費として計上できますか?
はい、決済手数料は「支払手数料」勘定で経費計上できます。売上の計上は施主が支払った総額(手数料差し引き前)で行うのが原則です。会計ソフトでは「売掛金(または現金)〈借方〉/ 売上〈貸方〉」で総額計上し、手数料が引かれた入金額との差額を「支払手数料〈借方〉/ 売掛金〈貸方〉」で処理します。適格請求書(インボイス)に消費税額を記載する際も、決済手数料差し引き前の設計料を基準にしてください。
Q適格請求書発行事業者(インボイス登録)をしていなくても、カード決済を使えますか?
決済サービスの利用自体にインボイス登録は不要です。ただし、免税事業者の場合、施主が仕入税額控除を使えない点を事前に説明しておくことをお勧めします。一方、適格請求書発行事業者として登録している場合は、請求書に登録番号・消費税額・適用税率を記載したうえで決済リンクを案内する流れになります。登録番号の記載方法と設計料請求書の記載例は「設計事務所のインボイス制度対応ガイド」をあわせてご覧ください。
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